小児皮膚科

小児皮膚科のイメージ写真

当院の小児皮膚科では、乳児期や学童期のお子様を対象に、その時期によくみられる小児特有の皮膚の症状などについて診断・治療を行います。

成長途中で未熟な状態にあるお子様の皮膚は、大人とは異なる原因で様々なトラブルが現れることがあります。またお子様は保育園や学校における集団での環境にありますので、感染など、様々な要因も考慮する必要があります。さらに成長に伴って疾患の症状が変化していくのも小児における皮膚疾患の特徴ですので、お子様の皮膚のトラブルに関しては、「小児皮膚科」の視点からの診療が求められます。

 

小児皮膚科では、主に以下のような皮膚の疾患に関して診療を行っています

乳児湿疹

乳児に現れる湿疹を総称して乳児湿疹と呼びます。生後1年未満の乳児では、皮膚のバリア機能が未熟なため、様々な原因で湿疹が生じます。
例としては、あせも、新生児にきび、乳児脂漏性湿疹、刺激性の皮膚炎、乾燥による湿疹や確定診断に至っていないアトピー性皮膚炎などがあり、これらを総称して乳児湿疹とよびます。

乳児湿疹の原因、症状は月齢や環境によりさまざまです。
3か月ごろまでの乳児に多い新生児にきびや脂漏性湿疹は、お母さんからの性ホルモンの影響により、乳児が生後一時的に皮脂の分泌が盛んになることが原因で発症すると考えられています。とくに分泌が多い頭皮や眉毛などの毛穴が詰まって、赤いブツブツや黄色いかさぶたができるなどします。

3か月後以降になると皮脂の分泌が少なくなるため、乾燥による湿疹が増えてきます。
また、刺激性の皮膚炎は、皮膚を刺激する成分と接触することで発症するもので、おむつかぶれやよだれによる口周りのかぶれなどがこれにあたります。

乳児湿疹の治療に関しては、原因によって異なる場合がありますが、皮膚のバリア機能が未熟な赤ちゃんの場合、日ごろのスキンケアが重要になります。
新生児にきびや脂漏性湿疹は適切なスキンケアを行うことで改善していくことがほとんどです。シャンプーや石鹸は刺激が少ないものを使い、強く擦らず、泡立ててから優しく洗うようにしましょう。ただし洗いすぎると皮膚が乾燥し、バリア機能が低下してしまうので注意が必要です。入浴後は刺激のすくないベビー用の乳液などで保湿を行います。 すりこまずに優しく手でなでるようにぬることがポイントです。

スキンケアを十分に行っていても症状が改善しない場合は、皮膚の炎症を抑えるステロイド軟膏、皮膚の乾燥を防ぐワセリンなどの外用薬を用いて治療します。

小児アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹(皮膚が赤くなったり、小さなブツブツができたり、皮がむけるなど)の症状が、良くなったり悪くなったりを繰り返し、慢性的に続く病気です。繰り返す期間が1歳未満の乳幼児では2ヶ月以上、それ以上の年齢では6カ月以上の場合に、症状や湿疹部位なども総合的に判断してアトピー性皮膚炎と診断されます。

お子様のアトピー性皮膚炎は、2歳未満の乳幼児期から学童期に発症することが多くみられます。成長するにつれて症状はよくなる傾向ですが、成人になるまで再発をくり返し症状が続くケースもあります。また乳児期にアトピー性皮膚炎を発症すると、続く幼児期に気管支喘息を発症し、学童期にアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎を発症するケースが多くみられます。この繰り返される状態を「アレルギーマーチ」と呼ぶこともあります。

アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹が身体の左右対称に現れるのが特徴ですが、症状が出やすい部位は年齢によって変化します。1歳未満の乳児期は、頬を中心とした顔や頭、首の周りに症状が現れます。カサカサとして赤くなり、掻いてしまうと皮膚が傷ついてジクジクとしたものになります。悪化すると胸や背中、手足にも広がる場合があります。

1~12歳の幼児期および学童期では、顔の湿疹は減るものの、首、脇の下、肘の内側、膝の裏側、手首、足首などに症状がみられるようになります。繰り返し掻くことで、皮膚が苔癬化と言ってゴワゴワと硬くなる場合があります。さらに13歳以上の思春期・成人期になると、主に顔や首のまわり、胸や背中などの上半身に発疹などの症状が強くみられるようになります。

アトピー性皮膚炎の治療は、スキンケアと炎症のコントロール、かゆみへの対策が中心です。とくにお子様の場合、かゆいと掻いてしまうことが多いため、薬による治療で炎症をコントロールしつつ、かゆみを抑えていくことが重要になります。炎症のコントロールは外用療法が基本になります。ステロイド外用薬や、免疫を調整する外用薬(プロトピック®、コレクチム®、モイゼルト®)が用いられますが、これらを症状や部位、経過に応じて適切に使い分けることが必要です。
かゆみに対しては、抗ヒスタミン内服薬などが補助的に用いられます。

またアトピー性皮膚炎では、紫外線による光線療法も有効とされています。当院では、有害な波長をカットし、皮膚疾患に効果があることが知られている308nmの波長のみを出力することができるエキシマライトを導入し、アトピー性皮膚炎に対して光線療法を行っています。

従来の治療でも効果不十分な方には、JAK阻害薬(リンヴォック®)の内服(12歳以上)や生物学的製剤(デュピクセント®)による治療も考慮されます。

アトピー性皮膚炎のページ

あせも

あせもは、大量の発汗にともなって、汗の正常な排出が妨げられることが原因で、皮膚に細かいぶつぶつとした皮疹が出る疾患です。暑い環境下で発汗が増えることが引き金となるため夏場に発症することが多く、また汗腺が未発達な乳幼児に頻繁に現れます。

あせもは、汗管が詰まる部位の深さによって3つに分けられます。

  1. 水晶性汗疹
    皮膚表面の浅いところに生じ、1-2ミリの透明な水疱が多発するものです。通常はかゆみや痛みはなく、スキンケアのみで軽快することがほとんどです。
  2. 紅色汗疹
    かゆみを伴った赤みのある丘疹が現れます。もっとも多くみられるあせもです。 
  3. 深在性汗疹
    扁平に隆起した皮疹が多発するものです。この部位では汗が出ない状態になっています。

あせもは、衣類が肌に密着していたり、湿度が高かったり、または長時間の発汗が続く状況で起こりやすいため、あせもの改善、予防には、こうした環境を避ける必要があります。夏場はエアコンを使用するなど涼しい環境を整え、衣服は通気性の良いものや綿などの素材のものを選ぶようにします。

炎症を和らげるためには、汗をかいたらこまめにふき取る、シャワーを使うなど皮膚を清潔にし、保湿剤によって保湿することが有効です。またかゆみの症状が強い場合は、ステロイドの外用剤や、抗ヒスタミン薬を使用することもあります。

とびひ

とびひは、医学的には伝染性膿痂疹と呼ばれるもので、黄色ブドウ球菌や溶血性連鎖球菌などの細菌の皮膚感染によって発症する疾患です。虫刺されやあせもなどで、かゆい所を爪で引っ掻き、そこにできた小さなキズから細菌が侵入して引き起こされることが多くあります。

症状としては、赤みや発疹、黄色ブドウ球菌が原因の場合は水疱、溶血性連鎖球菌が原因の場合はかさぶたが現れるのが特徴です。水疱は破れやすく、そこから菌が広がって、ほかの部位や人に感染する可能性がありますので注意が必要です。かさぶたができるものでは、強い炎症や痛み、リンパ節の腫れ、のどの痛みなどが現れる場合があります。

とびひの治療では、原因となる細菌の種類や症状の度合いに合わせた抗菌薬を使用します。症状が軽い場合は外用薬(塗り薬)、症状が広範囲に広がっていたり、発熱がみられたりする場合は内服薬(飲み薬)を選択します。かゆみが強い場合は抗ヒスタミン薬を併用することがあります。
患部を石鹸でよく洗い、しっかりと洗い流すことが大切です。

水イボ

水イボは医学的には伝染性軟属腫といい、伝染性軟属腫ウイルスの感染で発症するものです。皮膚のバリア機能が、まだ十分に発達していない幼児から小学校低学年までの児童に多く、感染力が強いのが特徴です。原因となるウイルスが手などを介して、目に見えないほどの微小な傷から侵入し、発症します。お子様の場合、プールなどで感染することも多くみられます。

脇の下や肩から肘にかけて、膝等、皮膚がこすれあう場所によく発症しますが、乾燥肌であったり、アトピーがあったりするお子様では、広範囲に多数発生することもあります。

水イボの中には白い粥状の液体が含まれており、引っ掻いてつぶし、その液体が付いた手で他の部位を触ると症状が広がってしまいますので注意が必要です。

水いぼは、一般的には半年から3年以内に自然治癒するとされており、そのままにしていても問題はありません。ただし、治癒するまでに時間がかかるのでその間に感染が拡がるのを防ぎたい、顔の目立つ部分にあるなど気になるという場合は、専用のピンセットを用いて摘除する方法があります。その際、表面に麻酔テープを貼って痛みを緩和します。そのほか、液体窒素で凍結する方法や、ヨクイニンを内服する治療法があります。

ウイルス性イボとは、ヒトパピローマウイルス(HPV)による感染によって皮膚表面にできる、数mm~1cm程度の小さな皮膚の盛り上がりです。多くの場合、痛みはありませんが、とくに足の裏に生じたものは圧迫されて痛みが生じることもあります。

ウイルス性イボは、どの年代にもみられるものですが、とくにお子様の手指や膝の裏などにできやすく、高齢の方ではあまりみられません。また1つだけ発生することもありますが、多発することもあります。

足の裏に発生した場合は、盛り上がりが小さく、硬くざらざらしていることがあります。これは「うおのめ」と似ていますが、「うおのめ」治療用の市販薬を用いてしまうと、悪化する場合がありますので、注意が必要です。

主に皮膚の微小な傷からウイルスが侵入することにより発症しますが、接触することにより皮膚の別の場所やほかの人に感染する可能性があります。そのためイボを触った手で、ほかの場所を触らないようにし、学校のプールやシャワー室など、裸足で歩くことが多い場所は感染リスクが高まりますので注意が必要です。

ウイルス性イボは、そのウイルスに対する免疫ができることで自然に治癒する場合もありますが、難治なことも多く、放置することにより多発、増大するリスクがあります。
治療方法としては、治療を考える場合は、以下の方法があります。具体的には、-196℃の液体窒素による冷凍凝固術によって除去する方法、サリチル酸が含まれた貼り薬によって、イボを溶かして取り除く方法、電気で焼き切る方法などです。

手足口病

手足口病は、一般的には幼児や小児にみられる感染症で、その名の通り、手や足、口に症状が出る病気です。原因となる病原体は、エンテロウイルスやコクサッキーウイルスで、通常、感染した人の唾液、便、そして咳やくしゃみによる飛沫によって感染が広がります。
主に夏に流行する感染症です。

手足口病の一般的な症状としては、口内炎、手、足、およびお尻の周囲での発疹や水疱の発生、さらには38度以上の発熱や全身の倦怠感が現れる場合もあります。お子様の場合、食欲が無かったり、不機嫌になったり、ぐったりとした様子がみられることがあります。感染力は比較的強く、夏から秋にかけて幼稚園などで夏風邪として流行することが多くあります。

手足口病と診断された場合、ウイルス排除に効果のある薬はありませんので、家で安静に過ごすことが基本となります。対症療法として、解熱鎮痛剤を処方する場合があります。口の中に水疱ができると、水分が採りにくくなって脱水症状を起こす危険がありますので、10分おきぐらいにお水を飲ませるなど注意が必要です。また食べ物も柔らかいものを用意するなどしましょう。

一般的に、感染後数日から1週間ほどで症状が改善しますが、発症後2~3日後に発熱がひどくなり、嘔気や頭痛がある場合は、ウイルスが脳などに入り込み、ごくまれに脳炎を合併している場合がありますので、なるべく早めにご受診ください。感染を予防するためには、手洗いやうがいを徹底し、タオルなどの共用は控え、食器やテーブル、おもちゃなどはできる限り消毒することが大切です。

虫刺され

虫刺され(虫刺症)とは、昆虫やその他の節足動物(例:蚊、ブヨ、ノミ、ダニ、アリ、ハチ、ムカデなど)に刺されたり咬まれたりすることによって、皮膚にかゆみや炎症を引き起こすものです。

刺す虫としてはハチがあり、咬む虫としてはムカデ、クモ、さらに吸血する虫としては蚊、ブヨ、アブ、ノミ、マダニなどが挙げられます。これらに刺されたり咬まれたりした場合、症状としては、かゆみと腫れが主なものです。これは昆虫が持つ毒成分による刺激反応と、毒成分や唾液成分によって生じるアレルギー反応によって引き起こされる炎症です。

刺激反応では、刺されたり咬まれたりした直後に腫れや痛みが生じたり、皮膚が赤くなったりします。アレルギー反応の場合は、直後か30分以内に紅斑、じんましん、ショックなどの症状が現れる即時反応型のものと、1~2日後に紅斑や丘疹、水ぶくれなどが現れる遅延反応型のものがあります。

症状の現れ方は虫の種類や、刺された人の体質、年齢などによって異なります。たとえば、アレルギー体質の人は症状が強く出るといわれており、また乳幼児は、大人と比べて腫れが大きくなりやすいことが知られています。

多くの場合、虫刺されでは虫が持っている毒成分・唾液成分がアレルゲン(抗原)となって体内の抗体と反応し、ヒスタミンなどのかゆみの原因物質が分泌されてかゆみや炎症などの皮膚炎を引き起こされます。これは軽いアレルギー反応であるため、しばらくすれば自然に治癒します。かゆみが強い場合はステロイドの外用薬を使用する場合があります。さらに炎症が強く、強いかゆみがある場合は、抗ヒスタミン薬や、ステロイドの内服を行う場合もあります。

注意しなければならないのは、ハチやムカデなどの刺咬性節足動物に刺された場合に起きる可能性のある「アナフィラキシーショック」で、血圧の低下や意識障害など、命に関わる重篤な症状が現れることもあります。この場合は、すぐに医療機関で処置を受ける必要があります。